cafe レイン
「小野寺さん。いつものでいいですよね。と言いつつもう作ってるんですけど」
ははっと笑う彼の手はトマトを輪切りにしている途中だった。
私は頷くと彼の前へと座り、コーヒーカップの取っ手に手を添える。
〝後で家でね″
花さんは確かにそう言った。
これって、丸山さんの家ってことだろうか。……多分そうなのだろうな。
昨日から気分の浮き沈みがジェットコースターみたいに上がったり下がったりだ。
でも、さっき私は決めたんだ。後悔しないって。
意を決した私は口を開くと、「……今の人、って」と彼に言った。
「今の人……、あ。花ですか? 彼女は幼馴染なんですよ」
「幼馴染」
彼の言葉をぽつりと反芻する。幼馴染だったんだ。だから、あんなに親しげだったんだ。少しだけホッとした。
幼馴染なら家に行くことだってあるよね。普通の異性の友達よりありえるよね。
私に幼馴染がいないからわからないけど。