cafe レイン


「小野寺さん。いつものでいいですよね。と言いつつもう作ってるんですけど」


ははっと笑う彼の手はトマトを輪切りにしている途中だった。
私は頷くと彼の前へと座り、コーヒーカップの取っ手に手を添える。


〝後で家でね″


花さんは確かにそう言った。
これって、丸山さんの家ってことだろうか。……多分そうなのだろうな。


昨日から気分の浮き沈みがジェットコースターみたいに上がったり下がったりだ。
でも、さっき私は決めたんだ。後悔しないって。

意を決した私は口を開くと、「……今の人、って」と彼に言った。


「今の人……、あ。花ですか? 彼女は幼馴染なんですよ」

「幼馴染」


彼の言葉をぽつりと反芻する。幼馴染だったんだ。だから、あんなに親しげだったんだ。少しだけホッとした。
幼馴染なら家に行くことだってあるよね。普通の異性の友達よりありえるよね。

私に幼馴染がいないからわからないけど。
< 63 / 144 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop