cafe レイン


「あいつ本当にアポなしで急に来るんですよ。いや、ありがたいんですけど。
ただそろそろ小野寺さん来る頃だし、いつ来るかなーってちょっと思ってたんですよね。誤解されたくなかったし」

「え」

「だって、誤解するでしょ?」


丸山さんはそう言って、私のことを真っ直ぐに見つめる。
心臓がドクンっと高鳴った。
真剣な彼の顔から目が離せない。



「はは、なんてね。はい、今日のランチです。どうぞ召し上がれ」


丸山さんは軽く笑った後、目を細めてからコトンと私の前にお皿を置いた。


え。え。え?
私の頭は真っ白だ。パニック状態。
え、今誤解されたくなかったって言った? 確かにそう言ったよね?


「小野寺さん。どうしたんですか?」


さっきの真剣な顔が嘘かのように笑顔で彼が言う。


「え、いや、なんでもないです。い、いただきます」


慌てて首を振ると、私はサンドウィッチを手にして一口齧る。さっき彼が切っていた新鮮なトマトとチーズが入っていた。


私の聞き間違い? 夢? 彼が好きだから見せた白昼夢じゃないよね。
そう変な勘違いをしてしまいそうなほどに彼が普通だから。


今日のサンドウィッチも美味しいと思うのに。食欲なんて消え失せてしまっていた。
喉に詰まってしまうサンドウィッチを流し込むようにコーヒーを飲む。
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