cafe レイン
「小野寺さんのオススメの小説ってありますか」
「えっ、しょ、小説ですか」
動揺しすぎな私に何も言わずに、丸山さんは私の答えを待つ。
「……好きなのは推理小説ですね」
「へえ。推理小説なんですか。恋愛とかじゃないんですね」
少しだけ目を大きくして感嘆とした声を出す丸山さん。
「あまり読まないですかね。あ、でも映画は恋愛モノ多いです」
「恋愛モノの映画って俺、どうしても途中で寝ちゃうんですよね」
「え、寝ちゃうんですか」
私が驚いた声を出すと、苦笑しながら彼は頷き左手で頭をかいた。
「それで当時付き合っていた彼女に酷く怒られて帰られたことあります」
「それはデート中の話です……?」
「ええ、まあ」
バツが悪そうに言う彼。
丸山さんって、なんていうか。
「凄く素直な人なんですね」
少年みたいというか、なんというか。自分の欲求に素直な気がする。
こないだも定食屋に連れて行ったって言っていたし。
私がそう言うと、彼はキョトンとした顔を見せる。パチパチと目を瞬かせながら私をまじまじと見つめる彼に、おかしなことを言ったかなと首を捻った。