cafe レイン


「えっと、私変なこと言いましたか……?」


おずおずと尋ねる私にハッとした丸山さんは違う違うという風に首を振った。


「初めて言われたので、そんなこと。俺も自分のこと身勝手だなってのは自覚しているから」

「そうですか? 私はそうは思わなかったですよ」


これは本心だ。好きでもない恋愛映画を彼女が見たいからって見ようとしてくれたんだ。……結局は寝てしまったけれど。
でも気持ちが嬉しいなって私は思う。


「それにどうせなら二人が楽しめる映画を見たいですよね」

「……はあ、参ったな。そんな風に言われるとか思っていなかった」


丸山さんは首の後ろに手を当てて何度か擦ると、目を伏せながら独りごとのように呟く。
それからすぐにこちらを向くと真剣な顔で口を開いた。


「そういえば、今度定食屋行くって話ししていましたよね」


急にその話を振られて、言葉に詰まる。行くって話はしていたけど。私が返す前に丸山さんが続けた。


「明日の夜はどうですか」

「あ、明日!?」

「予定ありましたか?」


予定のあるなしじゃなくて、あまりにも急だから驚いているのだけど。
行こうとは言っていたけど、そんなすぐだなんて思っていない。
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