cafe レイン


「そんなこと言ってるから俺、きっと彼女出来ないんですよね。……って、小野寺さん? どうかしました?」

「え。あ、いえ、何もないです」


ぶんぶんっと手を振って誤魔化したけれど、さっきの丸山さんの言葉が頭の中をぐるぐると回っている。


絶対絶対、私の気持ち悟られないようにしなくちゃ。
彼に気持ちがバレた瞬間に私の恋は終わる。

心に決めて私は顔を上げた。


ほどなくしてcafe レインに到着した。丸山さんが鍵を取り出し扉を開ける。
それと同時にカランっと鐘の音が鳴った。いつも通りだ。

だけど、いつもと違うのは夜だってこと。それに、営業していないってこと。



「どうぞ」


先に私を中へ通してくる。ペコリと頭を下げながら私は中へと進んでいく。
暗い店内。シンっと静まり返っていた。


丸山さんは灯りを点けると、カウンター裏へ回る。
私は何も言われなくてもカウンター席へと腰かけた。丸山さんの真ん前。


「コーヒーひとまず入れるので温まるまで待っててくださいね」

「ありがとうございます」


電気ポットに水を言えると電源を点ける。それから後ろの棚からコーヒー豆を取り出し、コーヒーミルに入れるとハンドルを回していく。
コーヒーのいい香りが漂う。
この香り。ああ、レインだ。そう思った。
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