cafe レイン


「いつもは数を用意しなきゃいけないんで俺一人でやってた回らないから電動で挽いちゃうんですけどね。今日はお客さんは小野寺さんだけなので」


私のために特別に挽いてくれているんだって思ったら嬉しさが込み上げる。


「いい香りがします」

「いいですよね。好きなんです。この香り」

「わかります」


コーヒー好きなら誰もが思うだろうな。
カチっと電気ポットから音がした。お湯が沸いた合図だ。丸山さんは挽き立ての豆をペーパーにセットして、その上からゆっくりとお湯を注いだ。

一気にお湯を流し込まず、蒸らしながら挽いた豆をじっと見つめる丸山さん。


私は黙ってその姿を見ていた。真剣な表情。コーヒー本当に好きなんだなあ。
私だって好きだけど、自分で豆を挽こうとかは思わない。コンビニのコーヒーで十分って思っちゃう。


「お待たせしました」

「いい匂い。美味しそう」


目の前に置かれたカップから白い湯気が揺らぐ。それと一緒にミルクとグラニュー糖が入った容器も用意してくれるが、ミルクもグラニュー糖も入れずに飲みたい。
何か混ぜるのはもったいない気がした。


「それとこれです」


そう言って、カウンターの下から取り出したのはお皿だ。
お皿の上に乗っているのはクレープ。いちごやブルーベリーなどのフルーツやチョコレートソースがかかっていてインスタ映えしそうだ。

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