cafe レイン
「あ、すみません」
そう言いながらズボンのポケットからケイタイを取り出す。ディスプレイに映し出された名前を確認して、彼は眉を顰めた。
「……ちょっと電話、出てもいいですか?」
申し訳なさそうに言う丸山さんに私は「はい」と言いながら頷く。
もう一度すみませんと言うと、通話ボタンを押した。
「何」
さっきからの丸山さんからは想像できないような不愛想な言い方だった。
少しだけ彼のケータイの通話口から漏れる声は女性の声だった。
「今人といるから無理。うん。わかった。あー、じゃあ後で買っていく。うん。じゃ」
通話を終わらせるとケイタイをポケットに戻す。
誰かからはなんとなく想像ついていた。
「すみません。幼馴染だったんですけどうるさくて」
丸山さんは、ははっと軽く笑う。……やっぱり相手は花さん。わかっていたけどズキズキと胸が痛んだ。
「……仲良いんですね」
頑張って笑顔を作りながら言うと、丸山さんは首を振りながら「腐れ縁なだけですよ」と笑った。
ぎゅうっと私は自分の腕を掴む。
「あ、小野寺さんまだお腹余裕あります?」
「え?」
唐突にそう尋ねられて私は思わずポカンとしてしまった。