cafe レイン
キス
あれから一週間経った。
同時に私が丸山さんのお店に行かなくなって、一週間だ。
あのクレープはメニューに追加されたのだろうか。丸山さんは気にしてくれているかな、なんてぼんやりと考える。
行かなくなるとどんどんと行きにくくなる。そんなことわかっているのに。
どう反応したらいいか、わからない。
こんなことならもう玉砕した方がいいのだろうか、なんて考えるけれどそれも無理だ。
客とオーナーって線引きしている彼に嫌われたくない。
いい解決策なんて浮かばずにただただ私は毎日を過ごすしかなかった。
「小野寺さん、ここのデータなんですけど確認したくて」
仕事中、私にそうやって声をかけてくるのは沖くんだった。
彼の持っている資料を見てから私はふんふんと頷く。
「確かここのファイルに」
自分のパソコンに向き直ると、フォルダを開いて該当ファイルを開く。
沖くんは背後で「そこにあったんすね」と納得したように呟いた。
「それ、メールで送ってください」
「ん。了解」
「そういえば最近小野寺さんからオーナーの話聞かないですよね」
ぐっと言葉に詰まる。自分が今どんな表情しているかわからない。パソコンの方を向いていてよかった。きっと沖くんに見られたらすぐにバレていただろうから。