cafe レイン
「うん。今お休み中」
「え、そうなんですか。何があったんですか」
「ほらほら仕事中でしょ」
そう言って私は無理矢理話を終わらせる。不満そうな沖くんだったが、小さく息をつきながら仕方ないといった感じで自分のデスクに戻っていった。
ごめんね、沖くん。心の中で私は謝った。律ちゃんにも話していない。カフェに行かない私に驚いた律ちゃんに尋ねられたけど、濁して話すことを避けていた。
律ちゃんもそんな私を察してか、聞き出すようなことはしない。それに助けられていた。
定時になって、私は帰る支度をした。もう少し残ってもよかったけど、最近残業ばかりしているから今日は早く帰ろうと思った。
何も考えたくなくて無理に仕事を詰めていた。
資料整理とか面倒で時間がかかるようなことを率先してやっていた。
ふうっと息をついてから会社を出る。冷たい風が吹いてぶるっと体を震わせた。
もう季節は冬だ。コートを羽織らないと寒い季節。
今日のご飯は何にしようかなって考えながら歩く。駅に着きそうになった時、ぽんっと私は誰かに左肩を叩かれた。
不思議に思いながらくるりと後ろを向くと、そこに立っていた人に目を瞠った。
「こんばんは」
そうやって笑ったのは、―――――花さんだった。