cafe　レイン
「あはは、大丈夫。涙も出てこないし。勝手に自惚れていたのは私の方だから」

私はにこっと笑って見せる。だけど、沖くんはそんな私を見て顔を歪ませた。


「涙も出てこないってそれほどショックだからじゃないんですか」


訝しげな顔のまま沖くんがそう尋ねる。私はそれを首を振って否定した。


「そんなことないよ」

「もう行かないつもりですか」

「……うん、そうかな」

「云うつもりはないんですか」

「ないかな」


そう返答すると、沖くんははああっと大げさに溜め息をつく。


「あの」


真剣な顔をすると、沖くんが続けた。


「それって小野寺さんの思い込みじゃないですか」

「え」

「オーナーさんのこと、俺知らないですけど。その花って女の人も知らないし。だから、偉そうなこと言ってんなって自覚してますけど。でも、小野寺さんとオーナーさんの二人、第三者から見たらすごくいい雰囲気でした。実際俺はこの目で見たんで。そこは信頼してほしいです。それに例え名前を彼女からとっていたって、だからなんですか。オーナーさんから聞いたわけでも何でもないのに勝手に決めつけるのよくないです」

「……沖くん」

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