cafe レイン
少しだけ怒ったような口調だった。沖くんの真剣な気持ちが伝わってきてじんわりと心が温かくなっていく。
一気に話した沖くんは難しい顔をしたまま、ビールをぐいっと煽って空にした。
そして、通った店員に
「おかわりください」
と告げた。「かしこまりました」と言いながら空いたジョッキを手に店員は去っていく。
「俺、前に当たって砕けなくてもいいって言ったけど。今って砕ける時じゃないですか」
「はは、無理無理」
笑いながら私は手を顔の前で振る。だけど、沖くんは真面目な顔を崩さず続けた。
「もう通わないんですよね? じゃあどうなったっていいじゃないですか」
「それは……、そうだけど」
途切れがちに私は答えた。沖くんの言っていることは尤もだった。それでも。
「嫌われたくないって、思っちゃうんだ。バカみたいだよね」
力なく笑う私。沖くんは眉を下げながら唇を噛む。
「……本当にバカですね」
「酷いなあ」
沖くんはさっきまで不機嫌そうに答えていたけれど、呆れながらも優しく笑ってくれた。
「もったいないな~、絶対その花って人より小野寺さんの方がいい女なのにな~」
店員が持ってきたキンキンに冷えたジョッキを手にもつと、沖くんがそう言う。