cafe レイン
「ははっ、そうかな」
「ですです。俺の方が近くで小野寺さんのこと見ているんですから。きっと大石さんも同じこと言います」
にししって歯を見せて笑う沖くん。彼にはもう感謝してもしきれないぐらいパワー貰った。誘ってよかった。
私は改めて思った。
「はー、ほんっと笑った」
「ですね」
私と沖くんはあれからたくさん話をして店を後にした。
沖くんと帰路につこうとした時だった。
「おい~、まる~」
と、声がして私たちは視線を向けた。そして、目を瞠る。
「ん~、あるけひゃい、家までおぶって。望」
そう話す人は丸山さんだった。彼は酔っ払っているのか、望って人の肩に腕を回しながら言っていた。
「……オーナーさん?」
驚いたように呟く沖くん。私はそれに何も答えられなかった。
「バカ言ってんなよ。タクシー呼んでやるから」
呆れた口調で彼はケイタイを取り出すとどこかに電話をかける。
望さんが立ち尽くす私と沖くんに気付いて、バツが悪そうに笑って私達に声をかける。
「すみません、声大きくて。あ、もしもしタクシー一台お願いします」
そう言う彼の横で丸山さんが
「は~タクシーなんか乗らないぞ。今日はお前の家で飲み明かすんだからな」
と大きな声で言った。
あんな彼の姿を初めて見た。「行きましょう」と沖くんが私の腕を引っ張った時、丸山さんとばちりと視線が合った。
「あ。小野寺さんだ。小野寺さーん」
そう言うと、丸山さんは私に向かって歩き出す。
それにビックリしたのは私だけじゃない。沖くんも望と呼ばれた彼もだ。