cafe レイン
「なにひてるんですか~」
呂律の回っていない丸山さん。
「小野寺さん、帰りましょう」
そう言いながら沖くんがぐいっと私の腕を引っ張る。けど、丸山さんも私の腕を掴んでその場から去ることを阻止した。
どうしようかオロオロしている私に向かって、
「会いたかったです」
丸山さんが言った。信じられなくて何度も目を瞬かせる。
「……会いたかった」
もう一度、丸山さんはハッキリと言った。聞き間違いなんかじゃない。
「ちょっと、まる。もうタクシー来たぞ」
望さんがぐいっと彼の肩を掴む。彼に丸山さんはずるずると引っ張られていく。
気付けば迎車と書かれたタクシーが道の端に停まっていた。それに丸山さんを押し込むと望さんが運転手と話していた。
それを見て私の足は自然と動いていた。
「ちょ、小野寺さん!」
沖くんの制止も聞かず、走り出すと望さんの横をすり抜けてタクシーに乗り込んだ。
「えっ」
「私送っていきます」
それだけ言うと、私は前を向き「出してください」と運転手に告げた。
扉が閉まりタクシーが発進する。まだ心臓がバクバクといっていた。自分がこんなことをするだなんて思わなかった。