cafe レイン

“……会いたかった”


その言葉の破壊力は凄まじかった。
何も告げずに諦めようと思っていたのに。あまり飲んでいないと思っていたけど、私も酔っ払っていたのかな。

ただ彼が私を少しでも求めてくれていたのかって思ったら、嬉しかった。


ちらりと彼を見ると、こっちの気持ちなんかお構いなしにすぅすぅと寝息を立てていた。それに苦笑する。本当に振り回されているなあ。
でも、酔っ払った時に出た彼の言葉は本音で、嘘じゃないって信じたい。
望さんが丸山さんの住所を告げてくれたからか、運転手は何も言わずに目的地へと向かっていた。

黙ったまま、私はカバンの中で震えるケイタイを取り出す。
相手はもちろん沖くんだった。ラインを開くことなく通知を確認する。


【砕けてきてください】


たった一言。それにふふっと笑った。
ここまで来たら本当に砕けてもいいかもしれない。


タクシーがあるマンションの前でハザードをたいて停まった。
ここが丸山さんの家なのかもしれない。

支払いを済ますと私は丸山さんを揺り起こした。


「丸山さん丸山さん」

「んー……」

「着きましたよ」

「……んー、うん」


寝ぼけながら私に引っ張られてタクシーを出る。運転手にお礼を告げると私は彼をエントランスまで連れて行く。


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