ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
「お前といいあいつといい、人を詐欺師詐欺師って傷つくわ」

優李も分かってんなら友人くらい選べよな。

「口車に乗せてヤり逃げしたくせ、まだあざとく連絡とってるとか、今こーやって牽制にきてるとか、詐欺師じゃなかったらなんなんだよ?」

「え?だから親切な友人だよ」

「胡っ散臭ぇ。」

ゴミはゴミ箱に。自販機に備え付けられたダストボックスに、自分の空き缶と合わせて放り込む。

「ねーハンバーグ、ヤバかったでしょ?」

あー。誰か、ついでにこの詐欺師の回収ボックスも備え付けてくれないだろうか。
ちゃんと俺がそこに葬ってやるからさ。


「はぁー。過去の彼氏にもなりきれなかった男の負け惜しみ、辛くない?」

「君もつくづく嫌な男だねぇ」

「お互い様だろ」

こんなしょーもないやりとりに時間割いてる暇はねーんだよ。

「もう邪魔してくんなよ」

「付け入る隙がなければ」


あー!厄介な天才女には厄介な魔オーナー様と厄介な詐欺師がもれなく付いてくる。

それでも、手放す気はないから、こう言うしかない。

「隙なんかねーから、せいぜい好きなだけ親切な友人してれば」

「!」

走り抜けた背中のかなり後ろの方で、今度は本家本元のハンバーグ食わせてやるとか呑気な声が聞こえてきたけど、とりあえず無視して走り続けた。

これだからハイスペックは困る。
どんどん受け入れるモノが増えていく。

でも、詐欺師に懐かれても平気なのは、かなり癪だが、優李が信用するヤツだからなんだろうな。
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