ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
それは俺の個人計画とは違って、公開プロポーズに変更しての出来事だった。


「神山、頼むな!」

全く可愛くないウインクをバチバチしながら奴に頼まれた俺は、自分が優李の為に作った映像をポンコツの言ったタイミングで流す。

「え、なに……?」

イベントの再現延長かと思い込んだオーナーと優李は、優李の作品をキャンバスにした、流れる映像と音にじっと感性を研ぎ澄ませ、堪能していた。

「ーー、」

頬を赤らめて映像に見入る優李の横顔に、俺なら待ちきれずにちょっと早いけど、このタイミングでプロポーズするんだろうな、なんて虚しい想像をしながらヘボ上司とオーナーを見る。

しかし。

曲が変わってから、オーナーの表情がどこか強張る。



不思議に思いヘボ上司を見るも、ヤツは作品オブジェが入っていた空箱に仕込んだらしい薔薇の花束の出すタイミングをそわそわと模索していた。

気のせいか?

なんて思わずに、俺の不穏受信アンテナを信じて、ここで止めれば惨事は起こらなかった。が。

曲と映像の最大の盛り上がりの瞬間、映像がぶつりと切れ、違う映像、というより簡易的な画像に切り替わる。

「……げ。」

それは、いかにもラブホで情事後爆睡しちゃいました。な、ヘボ坂上の間抜け面。

隣の女はうまいこと顔出ししてはいない、が。
………この女の品のない爆乳ラインには見覚えが、ある。


「……あの時のキャバ嬢女だ」


!!天才画家、社優李の驚異!!

ちょ、は?!
天才なのは色だけじゃなかったの?
目測の精度まで高いなんて、聞いてねーし!

「……優李。あの時のキャバ嬢って、何の話?」

「彗大が一回お楽しみになったキャバ嬢なんだって。わたしが初めて1人で事務所訪問した日、来てたよ」

優李さん!声のトーンが!無で怖い!表情が!冷たくて怖い!

「へーぇ?で。これ、誰が作ったの?神山くん?」

「あぁ?!そうそう!神山だよ!合成?かな?か、神山ー!どういうことだよー!びっくりするじゃーん!」

はあ?はぁぁ?!
このヘボ上司!部下を思いっきり捨て駒にしやがった!!
つーか、周りに見えないように超ウインクしてるけどムカつくだけだし!キメーだけだし!

「別に、合成でもなんでもいいんだけど。
トラウマの曲流すわ変な映像で優李の作品汚すわ、これ、どう受け取ったらいいのかなぁ?坂上さん?」

「え?!俺?!」

「部下のミスは上司の責任だろーが!!
つーか、どうせこのキャバ嬢の嫌がらせなんだろーが!いつも爪甘過ぎんだよ!顔貸せこのクソ男!今日こそ判子押させるからな!」

「待っ!祥子!誤解だー!」

「気安く呼ぶな!死ね!クタバレ!朽ち果てろ!」


ーーーー
ーー




と、まぁ。
えらいトバッチリは喰らうわ、今も優李の機嫌は最悪だわ。

もう、譲り損もいいとこだった。
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