ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
つーか、なんでLINE?
同じ部屋に居て、普通に言えよ。

優李に目を向けると、一人分ほどの距離をとった場所で、俺に背を向けて三角座り。
だから、ニットワンピで三角座りとかするからエロいっつってんのにこいつは。

「優李」

「……」

「櫻田佐波、この前会った。性別男だったけど」

「……」

「つーかあいつ、何なの」

「親切な友人」

「あれは親切とは言いません」

「カラオケでストレス発散するのと大差ないんだって」

ありすぎるわあの詐欺師!!

あーなんなんだ、今日は。厄日か?
本当なら今日は全然違う展開になる夜だったのに。
なんだってあの詐欺師の話になってんだ。

まぁ……こいつのやってることを理解出来ないほど、俺は鈍感じゃない。

地味に離れた距離に身を乗り出し、優李の腕を引き寄せ、軽くちゅ、とキスを落とす。

「……妬いてんのか」

「……なんで彗大は妬かないの」

悔しそうにむっと睨む優李に、申し訳ないかな安堵する。

「妬かないわけねーだろ。つーか今日のは完全な冤罪だ。俺は何も知らなかったし、優李に誓ってやましい事も何もしてない。つーわけで慰めろ」

「彗、」

ゴロリとそのまま組み敷いて、唇に深く深く口付ける。

優李の好きな角度は、ここ。間もなくなかなか良好な反応が返ってきたのをいい事に、するすると手を服の中に侵入させる。

「っ、もう!彗大っ、本当に手慣れ過ぎ!」

「それ、今言っちゃう?」

「それが原因で今モヤモヤしてんの!
やましくなくても終わった過去でもモヤモヤすんの!止められないの!今じゃないならいつ言えっての!」

「……ごもっとも、です」


このままなし崩しに深く展開するのは俺としても本意じゃない、が。

吐き出された内容のほとんどがご褒美、兼、拷問だ。

可愛い過ぎる。そんなことにモヤモヤしてくれる優李にハゲモエる。(激しく萌えるであって禿げねーぞ。)

でも、諸手を挙げて喜べないのは、どうのしようもない俺の女性遍歴に引っかかっているところだ。

俺にとっちゃ単なる過去の話を、どう言葉を尽くしたら納得させられるのか。

これ、悪魔の証明レベルの難題じゃねーの?

優李が今囚われてるのは、少なくとも今じゃなく爛れた時代の話。

その話を持ち出されると申し開きも出来ないし、どうすれば。



「……過去の下積み時代があるから、今、優李をスマートにエスコート出来るんだ、ろ?」

あの詐欺師ならこんな感じで言いくるめそうとか思ってたら、つい、口に出しちまった!

「下積み時代……」

そして、ジト目なのは頂けないが、この考えるような間は、意外に優李の中でヒットしてる?

詐欺師発案に近いものを展開するのは片棒を担がされたみたいでアレだが、背に腹は変えられない。

突き進むだけ突き進め!

「過去は変えようがない、だろ?
でも、その過去の積み重ねが今で、その積み重ねで出会えたんなら、例え煩わしいことも疎ましいことも、未熟な数々の出来事も!
全ては今に繋がる構成要素だ」

「……結果オーライ的、な?」

「ま、あ、そんな感じだ!」

お前にはそう響くのか!
嘘くささは抜けないものの割といいこと言った筈が。
まぁいい、結果オーライだ。
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