ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
ちょ………っ。


一気に頭の中が真っ白になる。

待て待て待て。ちょ………(真っ白)。

これは………本当ならかなりキツイ。嘘だろ?

ハレンチの国からヒワイな台詞とフシダラ極まりない行為を布教しにきたヘンタイがホシの数ほど周りにいないと、こうはならないだろ……!
(ハヒフヘホ作文まで出来たぞオイ。)

前回の濃密な時間。今回新たに続々と発表してきた技。


“ヘンタイがホシの数”ではなく、“ヘンタイのホシ”。

ホシ、一点だった。

ヤべー……。俺を指差して、一際勝ち誇った薄ら笑いを浮かべているヤツの光景すら見えてきた。

全部、あの詐欺師ひとりがまっさらの優李を仕込みに仕込んだ……。


「無理」

「え?」

「次、佐波と連絡とったら監禁する」

「え……!?」

「つーか、気は済まねぇけど、あいつ、何発か絶対殴ってやる!」


「えぇ?!」


俺の突然の狂気的発言連投に、数秒意味も分からず狼狽えるが、はっと意味を理解した優李が、今度は別の意味でまた狼狽えだす。


「え?……え?知、ってる、の?」

「ほんと“親切”な友人だよな」

「!!」

うっ。あからさまにショックを顔に出すなアホ……!

だいたい、優李の男友達枠で唯一俺が知る男だからって、リスキーでタイムリーな話題振りすぎだろーが……!

むしろショックなのは俺の方だ。ありえない絶望感だ。

この不安と恥じらいの混ざる、一番生々しい表情が残酷過ぎる。

あいつは一体、どれだけ優李を独り占めしてたのか。

キツイ。強い思い入れもなく、テキトーに入れ替わり立ち替わりで寝てる俺より、絶対キツイだろコレ。

1人の相手(しかも詐欺師)によって、手塩にかけて仕込まれ育てられた、詐欺師仕様の優李とか。


「よ、ようやくわたしのモヤモヤ分かってくれた……?」

「分かるもなにも……」

瀕死だバカヤロー。彼氏を心停止させる気か……。

ああ、言葉を失うとはこういう時に使うのか。
(自分はちゃっかり色々立て直しだしやがって。女ってのは逞しい限りダナ!)


本当にお前からは学ぶことが多いぞハハハハハ。


「でも……彗大のがひどい、からね?」

絶対お前のがひどいから!キツイから!しんどいから!

量の問題じゃねぇ、ヘビー級の質とその相手が大問題なんだよ。

つーか、俺の挙動を恐る恐る伺うそれも、俺を存分に傷付けるからもう勘弁してくれ……。

黙った俺が白旗を掲げたと思ったらしい。

それに満足したのか、徐々に不安そうだった優李の表情が少しだけ嬉しげに変わり、俺を見上げる。


「……ちょっとは本気で妬けた?」


なんだその、ちょっとしてやったりな顔は。
思い知ったか!な顔は。

思い知ったに決まってんじゃねーか!


「……妬かないわけねーだろ。めちゃくちゃ妬くわ!
惚れた女のJK処女セーラー時代に色々仕込んだとか言ってたヤツが、実はガチでお前の過去総取りだったんだぞ!トチ狂うわ!」

「っ!!」

「ちょっ、だから!……分かってても傷エグる……!
頼むから、その感情丸出しの赤面はやめてくれ……!」

「ぇえ?や、だって、佐波さん、まさかそんな話までっ」

「もーやめろ!動揺するな!生々しい!
分かってても、お前の口からあの詐欺師の名前、今聞いたら死ぬ!」
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