ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
なんてこった!こんな初歩的失態生まれてこの方初めてだ……!

なんなんだ。今日は俺の“生まれて初めて”大バーゲンか?出血大サービスし過ぎて、もう俺の血液ねーよ。HP瀕死だよ。

終わった。こんな嬉しくない“生まれて初めて”尽くし、コイツに出会わなきゃ一生無縁のーー

「んきゃーーーー!!!何この子何この子何この子ーーーー!!!」

「……??!!」


突然身を切り裂く悲鳴と、突如身体にのし掛かる重みに、思考が完全にフリーズする。

切り裂かれ飛び付かれ、ぎゅうぎゅう絞め上げられている身体から、更になけなしのメンタル血液が搾られる。

もうこれ以上は危険だ!早く輸血の手配を!
こんな心身の危機は生まれて初めてで、今日誕生したばかりの俺の脳内Dr.がそんなことを訴えている。


「あーほらー。こうなるからまだ喋っちゃ駄目だったのに。もー優李、一旦離れなさい!」

「ヤだヤだ!!この声帯は私のモノだよ!!」

ガブッ!

「???!!!」

出会って数分のクソ失礼な女に、色っぽい事情をすっ飛ばした予定外の首(しかも真正面!)をカジられるという人生最大の度肝を抜かされる初体験をして。

俺はようやく気が付いた。

この任務は足元を掬うなんてレベルでナメてかかっていては即死する。
(現に今瀕死中だしな。)

魂(タマ)を殺(と)りあう覚悟で挑む相手だと。
(つっても状況まるで把握出来てねーけど)


動揺さめやらぬところではあるが、心構えだけは立て直せたのでまずは1つ、試すことにしよう。


「おい、輸血させろ。」


あ。瀕死過ぎてセリフまで行き届かなかった。


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