ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
ハナから彼の答えが分かっていても、やっぱりリアルな苦渋と葛藤の決断を、直接、彼の口から聞けるのはとても嬉しい。

「なんていうのかなー。最初からダーっとなぎ倒す感じじゃなくて、もっとこう、焦れるエロ?で!
でも最後にはバーっと全部持っていかれるようなヤツがいいよね!」

「……なんかすげー伝わるけど、お前の語彙力もすげーな」

興奮のまま伝えても、あっさり理解してくれるのも流石は彗大。


「この前のカラオケの後、暴走して仕上げたってヤツは?」

え。

しかしここにきて、まさかのトラウマ案件の地雷がど真ん中で踏んづけられる。

あのカラオケの一件がこの一作品目であった筈だったことに珍しくピンときてないことにもびっくりだけど、さぁ今更、なんと言って伝えよう?


「あーそれはボツ」

「なんで」

珍しくピンとまだこないの彗大くん。

そんなガチ分かってません顔の即レスで返されたら、うまく答えられる気がしない。


「んー。依頼きたタイミングでちょうどまけぃたの指の色が超ヨくて、最初コレだ!って思い出しながら描いてたんだけどね?」

「……。」

「ホラ、あの時は一瞬だったでしょ?だからだんだん色忘れてきちゃって。」

「………。」

「で、朝、上からしょーこちゃんの色を足したら、まけぃたとしょーこちゃんで色がケンカしちゃってさー!」

「…………。」

「もーすっごい二人、相性悪くて笑っちゃった!」

「………………。」

やっぱり、めいっぱい褒めて持ち上げても無理か。

カラオケ残業が初めからコラボイベではなく別のお仕事での“ご利用”と知って、とんでもなく分かりやすくがっかりしてる。
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