ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
いくら慌ててたからって、自分でも突拍子もない行動だったなと思う。
押し倒して馬乗りになって動きを封じた後、某コンビニ限定ミニ小袋398円(税別)の、(とびきりお気に入りとはいえ)飴一粒でご機嫌取りをするなんて。
「最後のひとつ!喜んでくれないの?」
「ああ、嬉しいです。サンキュ……?」
しかも大して喜んでないご様子で更に焦る!
「もう怒ってない?」
「は?」
「だから怒ってない?!」
ご機嫌とりの筈が、本末転倒。
わたしをいつも幸せな気持ちにしてくれる一粒が、最後の一粒が、彗大にはどれだけ重大なことかわからなかったらしい。
自分の意図する気持ちと、急に冷たくされてわけがわからない気持ちで、口調はどんどん責め立ててしまう。
「別にお前には怒ってねーよ。ちょっと、他のこと不意に思い出して」
だから彗大の口から、柔らかい声が出た時は自分でもびっくりするくらい安心した。
「ケチだよ。彗大だから、あげたんだし」
予定外のハプニングのせいで、計算して口にした言葉にまで、つい不用意な本心が挟まって。
多分この時点で知らず知らずの内に、わたしは少しずつおかしくなっていた。
「彗……っひゃ、」
これが、今日わたしの魅たかった景色で。
魅せてもらおうと目論んでいた景色で。
まんまと彗大を誘い込めたことも、彗大が知ってて誘いこまれたことも、暗黙の了解だ。
“最後にはバーっと全部持っていかれるようなヤツ”の再現。
手慣れた技であっという間に組み敷き返されると、流れるように激しく甘い唇が
飴とともに落ちてくる。
「、んっ……!」
甘い。甘い。もっと。
いとも容易くズルリとわたしの欲を引きずり出し、また、あの鮮やかな世界を視界いっぱいにしてくれる。
「……は、あまっ、」
ドクリと心臓が疼く。
「はぁ……飴、が?」
「……っわかんね、」
今までで一番、扇情的で、余裕のない声。
彗大の唇と舌が、どんどん加速してくるのがわかる。
そろそろ止めないと、止まらなくなる。
頭で一瞬それがよぎったのに、制する理性をどこかで落としてしまったのかもしれない。
止めたく、ない。
服の隙間から手を差し込まれ、彗大の指が直に肌を滑って、背中側に移動する。
「っ、」
その先を求めて背中を少し浮かせたその時。
ーーーー♪♪♪♪
「あ、しょうこちゃんの着信音」
落としただろう理性を電話宅配され、一気に日常に引き戻される。
わたしに絡みついていた彗大の手が緩み、彼はわかりやすく項垂れていた。
うん。ちょっと、残念。
……ん?
色を魅ている最中に止められたのに、そのわたしの感情が、
“ちょっと”残念?
彗大のつむじを見つめながら、自分の矛盾に首をかしげた。
押し倒して馬乗りになって動きを封じた後、某コンビニ限定ミニ小袋398円(税別)の、(とびきりお気に入りとはいえ)飴一粒でご機嫌取りをするなんて。
「最後のひとつ!喜んでくれないの?」
「ああ、嬉しいです。サンキュ……?」
しかも大して喜んでないご様子で更に焦る!
「もう怒ってない?」
「は?」
「だから怒ってない?!」
ご機嫌とりの筈が、本末転倒。
わたしをいつも幸せな気持ちにしてくれる一粒が、最後の一粒が、彗大にはどれだけ重大なことかわからなかったらしい。
自分の意図する気持ちと、急に冷たくされてわけがわからない気持ちで、口調はどんどん責め立ててしまう。
「別にお前には怒ってねーよ。ちょっと、他のこと不意に思い出して」
だから彗大の口から、柔らかい声が出た時は自分でもびっくりするくらい安心した。
「ケチだよ。彗大だから、あげたんだし」
予定外のハプニングのせいで、計算して口にした言葉にまで、つい不用意な本心が挟まって。
多分この時点で知らず知らずの内に、わたしは少しずつおかしくなっていた。
「彗……っひゃ、」
これが、今日わたしの魅たかった景色で。
魅せてもらおうと目論んでいた景色で。
まんまと彗大を誘い込めたことも、彗大が知ってて誘いこまれたことも、暗黙の了解だ。
“最後にはバーっと全部持っていかれるようなヤツ”の再現。
手慣れた技であっという間に組み敷き返されると、流れるように激しく甘い唇が
飴とともに落ちてくる。
「、んっ……!」
甘い。甘い。もっと。
いとも容易くズルリとわたしの欲を引きずり出し、また、あの鮮やかな世界を視界いっぱいにしてくれる。
「……は、あまっ、」
ドクリと心臓が疼く。
「はぁ……飴、が?」
「……っわかんね、」
今までで一番、扇情的で、余裕のない声。
彗大の唇と舌が、どんどん加速してくるのがわかる。
そろそろ止めないと、止まらなくなる。
頭で一瞬それがよぎったのに、制する理性をどこかで落としてしまったのかもしれない。
止めたく、ない。
服の隙間から手を差し込まれ、彗大の指が直に肌を滑って、背中側に移動する。
「っ、」
その先を求めて背中を少し浮かせたその時。
ーーーー♪♪♪♪
「あ、しょうこちゃんの着信音」
落としただろう理性を電話宅配され、一気に日常に引き戻される。
わたしに絡みついていた彗大の手が緩み、彼はわかりやすく項垂れていた。
うん。ちょっと、残念。
……ん?
色を魅ている最中に止められたのに、そのわたしの感情が、
“ちょっと”残念?
彗大のつむじを見つめながら、自分の矛盾に首をかしげた。