ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
心なしか今日は自分主体というか、いつもより俺を喋らそうとする気配が薄い。

「え、」

「なんだよ」

「いつもと変わんないけど……?」

怪しい。なんで今ぎこちなく視線逸らしたテメー。

今日がハロウィンの時点で、ハロウィン画の依頼ではないんだろうが。

頼むから、もう騙し討ちするくらいなら言ってくれ。

「今度は何の手伝いすりゃいいの?」

「え?」

「オーナーからなんかの依頼、また受けてんだろ」

「え……」

ん?なんだ、この微妙そうな顔は。

この程度を言い当てられて今更固まるなんてタマじゃねぇし、全く思い当たらないとも言えない顔。

かといって、墓穴対策に「貰い物のチケットあるけど行くか?」としか伝えてないこのチケットが、実はオーナーからのモノだと言うのも今更でーー、

つーか、待て。グルなら既にオーナーから聞いてるよな。
じゃ、わざわざ隠してる方が恥ずかしいって話じゃねーかクソ!

羞恥プレイまで愉しませてなるものか。

「違うのかよ?オーナーからこのチケット貰ったから、てっきりそうかと思ってたんだけど」

「………。」

え?沈黙?
何?どういうこと?

何かを考えるその表情からは、怒りのような……怒りしかないような感情が滲み出ている。

え、なんか知らんが俺、墓穴掘った?

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