ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
クソ、お安く見やがって!そう分かりやすくホイホイと舐めとりにいくか!
絶対今日は振り回されてやんねーからな!

決意を新たに、唇の端についたケチャップを親指でギュッと拭き取ると、親指についたケチャップをちゅっと舐める。

「……っ!」

「付いてた」

ネタは上がってんだアバズレ女め。
声フェチプラスの音フェチのお前なら、今のも絶対好きな音だろ。エロエロ女め!

次いで、アバズレ女の手を掴むと、自分の口近くまで引き寄せ、フランクフルト第二関節手前くらいまでを豪快にかぶり取った。


「あ。」

「ん、まぁまぁうまい」

ちょうどコイツがケチャップを舐めとったイラっとした部分だと悟られたら羞恥で死ねるので、あくまで堂々と。

つーか。

「体調でも悪いの?お前」

「え」

「今日はいつもより反応が鈍い。」

表現に迷ったが、多分これが一番近い。

いつもしつこいくらい俺の声や音できゃーきゃー言うコイツが今日はまだ一言も騒いでないし、全体的におとなしめというかワンテンポズレるというか。


「ええー?元気だよー?」

その元気だよー?が既に胡散臭い。

「じゃあ次どこ行きたい?」

「えー彗大は?次は彗大の行きたいとこ行こ?」

なんだよ、気持ち悪い。お前らしくもない。いつもガンガン振り回す癖に俺に合わす意味がわからん。

「協力してやるっつってんだから、行きたいとこあんだろ?」

「んー、まぁ見たいとこは回りきったかなって。だから、次は彗大の番!どこでも付き合うよー?」

お前の口から俺のターンを促す日が来るなんて有り得ねぇ!

……まさかと思うが。


「どこでも付き合うのか?」

「いーよ」

「なんでも付き合うのか?」

「いーよ」

「じゃあラブホ」

「いーよ」

良くないだろ、このフシダラ女!
< 70 / 144 >

この作品をシェア

pagetop