ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情
先にひとつ伝えておく。

俺は断固として考えを翻したわけではない。
ここにコイツを連れてきたのは、キチンとした経緯があるから聞いてくれ。

「最近のラブホすごいねー彗大!アメニティ超充実してる!」

「見る場所そこかよ」

先にネタバレすんなフシダラ女!

別に、涙も鼻水もベッタリ付けられて服を汚されたからここにきたわけでも、大事なことだから二回言うが、気が変わったからここにきたわけでもない。

あれからコイツが落ち着いて、さてどこを見て回るか再度聞こうとした時。

「どうぞー」

俺たちをカップルだと勘違いしたビラ配りに渡された、特典付きチラシにコイツが食いついた。

「彗大!ハロウィンイベ限定のスイーツだって!」

「みたいだな」

「ハロウィンイベ限定の内装だって!」

「……みたいだな」

「まだ見て回ってない箇所だね!」

「……みたいだな」

「じゃ、行ってみよー!」

行ってみよー!じゃねーよ、軽すぎるわあざと女!

「行かねーよ」

「なんで?」

「なんででも」

「協力してくれるんでしょ?」

「協力、はするけど」

「じゃ、ここ。行きたい」

なんでコイツ、こんな肉食系なの?
ハングリー過ぎて、俺が出し惜しみしてる女みたいになってんのは何でだ?

ああクソ、ハメられてるのは分かってんのに。

「……見たら帰るからな」

「はーい♡」
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