ハイスペック男子の憂鬱な恋愛事情

「優李、ホント面白いねぇ。アンタの声フェチ」

「だってしょうこちゃん、今のわざとでしょ?発情しちゃう!」

「ははっ!発情って」


ここで言う発情の意図は、決してサカるだけのストレートな話ではなく、画家としてのインスピレーションが湧く、という意味で。

その意図に、出会った頃から勘違いしないで笑う彼女の腹式呼吸もとても美しくて。

「しょうこちゃんって、なんだかんだ人タラシだよねぇ」

「よく言われるー。けど、アンタの場合はその例外でコッチがビックリしたわ」


本腰入れてこれから口説こうと模索してる最中に、コッチの思惑無視で勝手にメロメロになってるなんて思わなかったもの。

そんな馴れ初めみたいな昔話を、更にいい声を継続しながらスケッチブックなんて出してくるんだから、私はより一層この出来る女の側を離れられなくなるのだ。

て。

「ん?私にとって悪くない話?」

「そ。」

「声?」

「うん」

「イイの?」

「私が妬いちゃうくらいには」


「!!!」

ここ数年、しょうこちゃんを超える音なんてなかった。

私の好みを熟知しているしょうこちゃんのお墨付きがつくほどの声。


「え、ちょ、女?男?」

「男。神山慧大28才。なーんかやたらとオプションだらけのハイスペック男。因みに実はもう応接室に通してる。」


かみやまけいた。かみやまけいた。かみやまけいた。かみやまけいた。


「ということで、これはビジネスだからアトリエ入るまで、彼は喋らせないよ。」

「えーーーー!!」


そんな期待値振り切る話して!

絶対しょうこちゃん、いじわるしてるーー!
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