儚き夢…
「…夜市?」
『お帰り琴…無事で本当に良かった…』
帰るなり直ぐにギュッと抱き締められた私の体。
こんな汚れた体で夜市に触れるのはいけないと思い、自然にそっと離れた。
「只今…今日は依頼無かったの?」
座布団に座りながら私は夜市に問い掛けた。
『あったさ。今日も何人も殺してしまった…』
私の横に座り、夜市が答える。
何故だか自分達が大犯罪者の様に思えて、掌をギュッと握った。
「そう…私も今日1人殺したわ。まだ若い男を…」
『…無事だったんだ。これ以上の幸せは無い。』
そう言って夜市は懐から私が渡しておいた簪を出した。