占いのお陰でシンデレラになれました！～奇跡の偽装結婚

「僕は、今回のこと…良かったって思ってるんだ。」

「え？な、何がですか？」

「僕が大失態を起こしたこと。
このことが父にバレたら、僕は絶対にクビだ。
そしたら、僕はある意味、楽になれる…」

「楽に…？」

「そうだよ。
橘建設の社長なんて、僕には元々荷が重すぎたんだ。
僕は無能な人間だけど、それでも多分人並みの事なら出来る。
これからは、もっと庶民的な暮らしを…」

「か、勝手なこと、言わないで下さい！」

自分でも驚くような大きな声を出していた。
優紀さんの言いぐさが、なんとも勝手に思えたからだ。
優紀さんは、目を丸くして私を見てた。



「生まれてから今までずっとセレブな生活をしてたあなたに、庶民の暮らしが出来ると思ってるんですか？
そんなの絶対に無理です！」

怒りで、体が震えてた。
なんでそんなに興奮してしまったのか、自分でも良くわからないけど…
とにかく私は、本気で怒ってしまってた。



「で、でも…僕は……」

「那月さんもわかってるんですよ、きっと。
あなたが、庶民の暮らしなんて出来ないことがわかってるから、必死になってあなたを守ろうとしてるんです！」

「僕はもうこれ以上、那月に守ってほしくなんてないんだ！
そんなことしてもらうくらいなら、のたれ死んだ方がましだ！」

「その言いぐさが甘いっていうんですよ！
優紀さん…あなた、お金がなくて家も追い出されて、ネットカフェに行くお金すらなくなったことがありますか？
お金がないってことはすごく惨めで心細いことです。
あなたにそんな生活が耐えられるわけがないし、あなたはそうなりゃ死んでも良いと思ってるかもしれませんが、那月さんの気持ちはどうなるんです！？
ご両親のお気持ちは？
あなたが死んだら、みんながどんな気持ちになるか、わからないんですか！？」



何がきっかけになったのかはわからないけど…私はなんだか異常な程、感情が高ぶって…
気付けば目にいっぱいの涙をためていた。