歪な光
調書は瞬が書くことになり、よくやく二人きりになれる時間がやってきた。





初めはありきたりな事しか聞かれない。





名前、年齢、住所など…





言わなくてもそろそろいいんじゃないかと思うくらい、この手の質問は飽き飽きしていた。





「でも、どうしてこんな遅くに制服で出歩いてたの?」






宮城と違って、とても優しい尋問。
カウンセリングでも受けている気分だ。





「帰りたくないから。全て話したら、瞬ちゃんが私を助けてくれる?」





私の言葉に、困惑しながらも、瞬はなんとか向き合おうと必死になっているのが伝わる。





「被害届出してくれたら、もっと、君の助けになれる。理由を教えてほしい」






被害届…






そんなもの、出せるわけない。






私の血の繋がった人だから、
私を産んだ、弱い人間だから。






虐待される幼子が、親をかばう気持ちと全く同じだ。






産んでくれた家族を、罪人にしたくないと庇ってしまう。






何故だか自分でもわからない。





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