歪な光
父親が蒸発してしまったのは、私が幼い頃だった。だから、父親の記憶なんて私にはない。





そして、母親の実家で祖母と三人で一軒家で住んでいた頃は良かったんだ。





時々、酒癖の悪い母は、私を責め立て暴力を振るうときもある。それでも、間には祖母が居てくれた。





私は祖母だけが心の支えだったんだ。






そんな祖母が、私が高校に上がった夏に他界してしまった。






それから、母親はもっと人として堕ちていった。酒癖も男運のなさも、全て母から幸せを遠ざけることばかり。





そんな時、あの男が母親の彼氏として家にやって来てから、うちはもっと悪化していったんだ。







もともと、男運の悪い母だけど、この男だけは引っかかってはいけなかったんだよ。






蜘蛛のように、見えにくい糸で巣をはり、そこに触れてしまえば最後、逃げれなくなる。







お金も母の愛も全て吸い取られ、私の居場所さえも奪っていくんだ。




< 11 / 165 >

この作品をシェア

pagetop