脳内☆彼氏
準備室を出た途端、ざわついていた音楽室がシンと静まり返った。全員が部長と私を見ている。部長は気にせず皆に「全体練習!」と声を掛けた。
皆が並び始めると、部長がアルトの真ん中を指差した。

「観月、そこに入れ。」
「ええ!?」

指差さされた女子二人がしっかりと手をつないで悲鳴を上げた。

「嫌です!ウチらまで音外れます!」

「いいから、そこ空けろ!」

部長は二人の間に無理矢理私をねじ込もうとした。突っ立っている私の腕を掴んで、二人の間に立たせる。二人は露骨に私と距離を置いて、舌打ちした。

まわりの女子がヒソヒソ引き離された二人を励ましている。

「かわいそー!」
「部長ひどいよねー!」

私はうつむいて立ち尽くしていた。前奏が始まったが、歌える訳が無い。

「観月!声出て無い!」
部長が怒鳴るので、なんとか顔を上げて口を開いたが、声は出てこなかった。


何これ、最低…
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