脳内☆彼氏
次の日は、まだ眠かったけど、なんだかとても楽だった。
捨華がぴったりとそばに控えている。それを追い払わなくてもいいんだと思ったら、ほんとにホッとした。

妄想してる方が楽って、どんだけ病んでんだよ私(笑)

そんな自分を認める諦めがついたから、楽になれた。

妄想女ですが、何か?って感じ。

(嬉しそうですね。)
捨華が微笑んだ。

(うん。私には捨華がひつよー。捨華も嬉しい?)
(…あと一息、と言う所でしょうか。)
(?)

捨華は私の顎に手を当てた。

(必要ならば、言えるでしょう?『捨華が好き』だと。)

(なっ…!)
私はペンを取り落とした。教室中の視線が私に集まる。慌てて拾って、もう5限目だと気付いた。

(言えるでしょう?私が必要なのだから。)

畳み掛ける捨華から私は必殺に目を逸らせた。

(そ、それとこれとは全然違うよ!)


ひとりでいるのは怖いから、生きて行く為に妄想が必要。

それが私の精一杯の言い訳。やっと妄想を正当化出来たのに、捨華はそれでは満足出来ないの?

(出来ませんね。)

間近で見詰められて、上手く息が出来ない。



『好き』は、『求める』と言う事。

妄想に守られる事を必要とする自分の弱さは認めてもいい。

でも…妄想を求める自分の欲望を、汚ならしい自分を認める事は出来なかった。


(だって…言ったら、後戻り出来なくなるよね?)

(当然戻れません。)

(ごめん…私、まだ…)

捨華は黙って私の頭を撫でた。
諦めてくれたのかと、チラリと盗み見る。


引き下がる気は全くない捨華の目にぶつかって、私は慌てて目を伏せた。

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