脳内☆彼氏
そんな感じで今、私はくみちゃんと一緒にせっちゃんのおしゃべりをぼんやりと聞いている。
聞いてるだけなら、適当に頷いてればいいんだけど…
「あの子、超ムカつくよね!かのちゃんもそう思うよね?」

こういうのは困る。
聞いてるだけで、その子の悪口を一緒に言ってる事にされちゃうし。

「ん~。」
私は曖昧に返事をした。せっちゃんは、それが気に入らないらしく、私をちょっと睨んだ。
…怖いんですけど。


せっちゃんが立ち上がった。
「私今日、日直~。職員室で日誌とってくる。」
くみちゃんも当然のように立ち上がった。

待って!一人にしないで!
「私も行く!」
私も慌てて立ち上がった。

せっちゃんがクスリと笑った。
「かのちゃんて犬みたいだよね。いっつもトイレや職員室まで私についてまわってさ。」
「へ?」
「犬なんだから、今日からジョンって呼ぼうか。ね~ジョン。」
「何それ!やめてよ。」
せっちゃんはケラケラ笑った。
「ジョ~ン!ジョンジョン!ほら、お手しなよ!」
「やめてよ!私は犬じゃない!」
「あはは、ジョンが怒った~!」
「やめてってば!そんな名前、嫌!」
「ジョンジョン~!」

せっちゃんは笑いながら私を犬呼ばわりし続けた。
私は呆然とした。

嫌だって言ってんのに、なんでやめてくれないの?
普通の人なら、やめてって言ったらやめるよね?
せっちゃんが言葉の通じない不気味なエイリアンに見えた。
一体、なんて言えば伝わるんだろう。

(…花音)
(捨華…?)
捨華が銀髪と中華風の長い袂をそよがせて、私の肩に手を置いた。
(落ち着いて、あの者の表情をよく観察なさい。)

…せっちゃんの笑顔は、私への嘲りで醜く歪んでいた。

(ああ、そうか。せっちゃんは私の事が嫌いなんだ。)

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