鬼部長に溺愛されてます
「それを言うなら私の方です。研修中に倒れた私を病院に運んでくださったことを覚えていますか? あのときは本当にご迷惑をかけてしまいました」
「よく覚えてる。厳しいことを言い過ぎたかと反省させられたよ」
桐島さんが微笑むから、「違うんです。寝不足もあったので」と慌てて否定する。
「私、あのときから桐島さんのことを……」
人を寄せつけない冷たさのあった桐島さんの優しさを知って、急速に惹かれてしまった。
あんなことがなかったら、今こうして一緒にいる未来はなかったのかもしれない。
だとしたら研修中に倒れた私は、未来の自分に大きなプレゼントをしたことになる。
「俺のことを、なに?」
彼がからかうように私の目を覗き込む。
「そこは察してください……!」
「無理だな。俺はそこまで空気の読める男じゃない」
わざわざ聞かれると恥ずかしさが先行してしまって言えない。