鬼部長に溺愛されてます

桐島さんから目を逸らしてもじもじしていると、彼は突然立ち上がった。


「ここで言えないというのなら、別の場所でゆっくり聞こう」


別の場所って……?

桐島さんに手を引かれるままラウンジを後にした。
エレベーターに乗り込むと、彼が三十三階をタッチする。三十五階のラウンジが最上階だから、ふたつ下の階だ。


「あの、桐島さん、どこへ行くんですか……?」

「部屋を取ってある」

「えっ……」


それはつまり……今夜はここに泊まるってこと?

私が驚いて固まっていると、桐島さんが私の手をギュッと握る。
“しっかりしろ”と言われたような気がするけれど、それは無理だ。

今まではキス止まり。それも回数だって数えられるくらい。それがはからずも泊まりだなんて、心の準備ができていない。

胸が上下するほどに鼓動が高鳴り、耳の奥に反響する。

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