鬼部長に溺愛されてます
エレベーターが三十三階に着くと、足をもつれさせながら桐島さんに続いた。
「ロイヤルスイートというわけにはいかなかったけど」
そう言いながら桐島さんがドアを開けると、見たこともないゴージャスな空間が私の目の前に広がった。扉がいくつもあることから、普通の部屋じゃないことは確か。
ブラウンを基調とした落ち着いた室内は間接的に照明が点けられ、豪華さをいっそう引き立てている。
なによりも驚いたのは、室内に施された飾りだった。
たくさんの風船が浮かび、いたるところに色とりどりのバラが飾られている。
中央に置かれたテーブルにはバースデーケーキとシャンパンがあった。
「麻耶、誕生日おめでとう」
「……どうして私の誕生日を?」
今夜は桐島さんとふたりで過ごせればそれだけで十分だった。
それなのにこんなサプライズなんて……。
嬉しさが込み上げて胸が震える。
もしかして、今夜の待ち合わせを八時半にしたのは、この準備のため……?