鬼部長に溺愛されてます
この時間を逃したら、きっとまた話すこともできなくなるに違いない。
……ええい、こうなったら!
限られた時間を大切にしなくては。
ひと思いに脱いで桐島さんの待つ方へと足を踏み入れ、真っ白い湯気が立ち上る中、そっと湯船に身体を沈めた。
「あの、桐島さん……」
「なんだ」
「そんなに近づかなくても……」
ピッタリ寄り添ってきたかと思ったら今度は後ろから抱き寄せられて、脇腹付近にスルリと忍ばせられた腕に、思わず「ひゃっ!」なんて声を上げてしまった。
「もっと力を抜いたらどうだ」
「そんなことを言われたって……」
抱き合うのは初めてじゃないのに、いつもと違うシチュエーションが鼓動を加速させる。
「他のみんなは、まさか俺たちがこんなところでこっそりふたりきりだとは思いもしないだろうな」
桐島さんが鼻先で笑う。