鬼部長に溺愛されてます
感情のひとかけらも感じられない口調だった。
指先が触れ合った余韻を一気に冷ましてしまうほどの冷やかな態度だ。
どうにも近づけない、見えない壁が私の前には立ち塞がる。
どうしたら、その壁の向こうにいけるんだろう。
どうしたら、桐島部長に一歩でも近づけるんだろう。
彼に心を奪われてから間もなく三年になるのに、ふたりの距離はあのときから依然として変わらない。それどころか、社内恋愛禁止だなんて恋の末路は決まっているも同然だ。
私がどれほど想っても、その想いは部長には届かない。
素っ気なく冷たい態度が、垣間見られた優しさを上書きしていく。
その背中にもう一度小さい声でお礼を言い、私はそそくさと会議室を後にした。