鬼部長に溺愛されてます
すれ違う人たちから麻耶を気遣うように、たまに肩先へ伸ばされる木下の手に苛立ちは隠せない。
ふとふたりは、煌びやかな光を放つ店へと入っていった。
……ジュエリーショップ?
そこにどんな用事があるというのだ。
客の少ない店内だけにさすがに入るわけにはいかず、街路樹の陰に身を潜めて広く開放された店のガラス窓から見えるふたりの姿を観察する。
店員に取り出してもらったジュエリーをカラダにつけて、麻耶が嬉しそうに目を細める。
『これ、かわいい』
『よし、それを麻耶にプレゼントしよう』
そんな会話が聞こえてきそうなほど、ふたりが楽しげに顔を寄せ合って笑い合う。
いったいどういうつもりだ。
震える拳を握り締めながら我慢強く見守っていると、ふたりはそそくさと店から出てきた。
再び歩きだし、また別のジュエリーショップへと吸い込まれていく。
幾度となくそんなことを繰り返し、ようやく気が済んだのか小さな包みを抱えたふたりが店から出てきた。