鬼部長に溺愛されてます

「なに食いたい?」


木下の声がふと耳に届く。
……この後、食事までするつもりか。
そもそも、如月はどうしたというのだ。
どうしてふたりきりなんだ。

かくして、再び尾行開始。
さっきよりも新密度がアップしているのは、気のせいなのか?
完全に余計なフィルターで見てしまうふたりの後ろ姿。
そうこうしているうちに、ふたりはあるレストランへと入っていった。
さすがに外で待っているにもいかず、俺も店へと足を踏み入れる。


「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?」


俺の気も知らず、場をわきまえない甲高い声で確認する女性店員に、ふたりを観察でき、なおかつ身を隠せるテーブルへと案内させた。
静かなはずのBGMが、やけに耳障りだ。
これではふたりの会話が聞こえないではないか。

イライラしつつ、観葉植物の陰からあくまでもスマートにふたりを覗き見する。

……なにを話しているんだ。
ここでも楽しく笑い合う様子のふたりに、つい身を乗りだして聞き耳を立てようとしたそのときだった。

――ガッシャーン!

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