鬼部長に溺愛されてます

平静な態度を慌てて装った。


「びっくりしちゃった」


両手で頬を覆い、麻耶はニコニコと笑った。


「どうしてここに？」


すかさず木下に突っ込まれて、「たまたまだ」と答える。
まさか尾行していたなどと言えるわけもなく、「仕事の打ち合わせだ」と余計な嘘まで吐く始末。


「あやし～な、桐島さん」

「……なにがだ」

「もしかして、麻耶のことが気になって、俺たちの後を付け回してたんじゃないですか？」


木下が嫌な笑みを浮かべる。


「え？　そうだったの？　桐島さん」

「俺がそんなことをするわけがないだろう」


鋭い指摘に動揺したことを悟られたくはない。
落ち着き払った素振りで笑いかけた。