鬼部長に溺愛されてます
「今日はね、誠吾に頼まれてミオリの誕生日プレゼントを買いにきたの。ほら、ミオリは最上級のお嬢様でしょ? 誠吾の見立てじゃ心配だから」
やはり、そんなところだったか。
いや俺だって、わかっていたさ。
麻耶と木下が妙な関係になることなど、天と地がひっくり返ったってあり得ない話なのだ。
「そうですよ、余計な勘ぐりは無用ですって。っていうか俺、ミオリひと筋ですから。いくら麻耶でも、ミオリの素晴らしさに適うわけがない」
木下が平然と麻耶の評価を下げるものだから、テーブルの下で俺は拳を握り締めた。
「せっかくだし、桐島さんも一緒に食べませんか?」
「いや、今夜は木下にたっぷりとご馳走してもらえ」
麻耶に手を引かれたが、カバンを手に取り濡れたスーツのまま、努めてスマートに振舞った。
……カッコ悪いこと極まりない。
店の外へ出るとモワッという不快指数マックスの湿気に包まれ、余計無様に感じてしまう。
……俺はいったいなにをしているというのだ。