鬼部長に溺愛されてます
ふたりの関係を知っているのは社内では唯一私だけなのだから、もう少し素直に聞き入れてもらいたいものだ。
軽く睨んでみたところで、誠吾はまったく気づかなかった。
「ところで、ミオリから聞いたぞ」
何を?と目で聞くと、「この前、桐島部長とずいぶん仲良さそうにしてたらしいじゃん」と想定外のことを言われた。
「え……?」
私が桐島部長と仲良くしてた?
いったいなんのことを言っているんだろう。
「とぼけるのかよ。会議室で……」
……ああ、あのときのことか。
すっかり傷の癒えた指先に目を落とした。
誠吾が、弱みを握ってるんだぞというような勝ち誇った顔を浮かべる。
「あれは違うの。指に刺さった棘を取ってもらってただけだから。……でも、ミオリはあの場にいなかったのに」
私は話していないし、どうしてそのことを彼女が知っているんだろう。