鬼部長に溺愛されてます
気のせいか、表情が少しだけ明るく見える。
「思い出したんだ。もしかしたら処分する内部文書を段ボールに詰めたときに紛れてしまったのかもしれない」
「それじゃ、十階の廃棄置き場に……?」
部長は無言でうなずいた。
「廃棄処分として段ボールに詰めた内部文書なら、大丈夫じゃないですか?」
専門業者がそのまま裁断して処分するのだから。他の人の目に触れることもないだろう。
ところが部長は「いや、そのままにしておくわけにはいかない」と首を横に振った。
「業者が絶対に開封しないとは言い切れないし、社内の人間が探し物をしないとも限らないから、誰かの目に触れる可能性は徹底的に排除しなくてはならない」
メガネのブリッジを指先で上げながら部長がきっぱりと言う。
さすがは桐島部長だ。私だったら、その時点でこの件は解決としてしまうかもしれない。
ともかく、それほど大事な書類なのだろう。
私たちは十階の一室にある廃棄置き場へと急いだ。