鬼部長に溺愛されてます

そこは、社内で処分できない内部文書が集まる場所だった。
およそ三十畳の部屋に段ボールが積み上げられている。その数がどのくらいあるのかはわからないけれど、パッと見でも二十箱はあるだろう。

データ化が進んでいるとはいえ、うちの会社はまだ紙の書類を多く使っている。
それは社長が六十代で、パソコン上で見るよりも紙で見たいという要望があるらしいことも関係しているだろう。

積み上げられた段ボールを目の前に、思わずため息が出てくる。


「水原は帰れ」


桐島部長が唐突に言うから、「はい?」と聞き返してしまった。


「こんな中から探していたんじゃ、時間がいくらあっても足りないぞ」


ここまで一緒に探してきたのに、それはないんじゃないかと思う。やっと発見できるかもしれないのに。
それに、この段ボールの山をひとりで崩していくのは、いくら仕事のできる部長でも大変な作業だ。


「帰りません。一緒に探します」


きっぱりと強い口調で主張した。

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