鬼部長に溺愛されてます
桐島部長との時間を引き延ばしたい気持ちももちろんある。でも、それ以上にいったん引き受けた仕事を途中で投げ出すことも嫌だった。
「意外と強情だな」
部長が呆れた口振りで言う。
でも、そんな言い方はちょっとひどい。
部長相手だというのにうっかり口を尖らせると「いや、ごめん」と彼が慌てて謝る。
今までとは違った柔らかな空気が流れた気がした。
これまで果てしなく遠かった桐島部長との距離が少し近づいた気がして、ひとり勝手に心を弾ませてしまった。
早速ダンボールをひとつずつ開け、処分待ちの書類をかきわけていく。
桐島部長と同じものを同じように探せることが嬉しくて、嫌いな残業がかさむことも面倒な作業をしていることも忘れてしまった。すぐ近くに感じる部長の気配がくすぐったくて、ウキウキする気持ちを隠すことに必死になる。
何個目の段ボールだったか、取りだした書類の中に薄いブルーのクリアファイルが顔を出しているのが見えた。
「部長、これですか?」
私の声に反応して急いで駆け寄り、部長が中身を確認する。