鬼部長に溺愛されてます
そして、「……そうだ」と大きく息を吐いた。
「助かったよ。ありがとう」
よかった……。
スーツについた埃をさっと払う部長のスマートな仕草に無意識のうちに見とれていると、段ボールを椅子代わりに座っている私に彼が手を伸ばしてきた。
「……はい?」
「手だ、手をよこせ」
桐島部長がぶっきらぼうに言う。
首を傾げながらためらいがちに手を重ねると、ぐいと引いて立ち上がらされた。突然のことに急加速していく心音。
「助かったよ、水原」
「あ……いえ、その……あの、良かったです、見つかって」
掴まれた手に気を取られて、しどろもどろな返答になる。
どぎまぎする私のことは気にも留めずに、部長は顔色ひとつ変えない。
対照的な私たちの様子を俯瞰で見て、ひとり恥ずかしくなった。