鬼部長に溺愛されてます

◇◇◇

桐島部長に連れられてきたのは、会社からタクシーで三十分ほど走ったところにあるこじんまりとした小料理屋だった。
メインストリートから一本中へ入り、平屋の隠れ家的な店構えだ。


「あら、健人、今日はずいぶんと遅い時間のお出ましね。しかも女の子連れなんて」


遅い時間のせいか店内に客の姿はなく、おかみと思われる三十代前半の着物姿の美しい女性がカウンターから微笑んだ。

桐島部長を呼び捨てにするなんて親密な仲なのかな……。

つい余計な勘ぐりをしてしまう。
カウンター席へと落ち着くと、部長が紹介をしてくれた。


「こちらは早苗(さなえ)さん。ここの店主だ」


早苗さんがにこやかに微笑む。
彼女の頬にえくぼが浮かぶと、美人からかわいらしい印象へと変わった。


「初めまして。桐島と同じ会社に勤める水原麻耶です」


私は軽く頭を下げた。

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