鬼部長に溺愛されてます
「よろしくね。健人は大学時代の後輩なの」
着物の袖から真っ白な腕を覗かせて、早苗さんが手際よくおしぼりとお茶を出してくれた。
大学時代と言ったら十年以上の付きあいになるのかな。当然ながら私よりずっと部長のことを知っている人だ。
「早苗さん、適当なものを見繕ってくれ」
いつもそういうスタイルなのか、部長がメニューも見ないで注文を済ませる。頻繁に通っている店のようだ。
部長は、にわかに落ち着いた様子でメガネを外してカバンへとしまった。
「メガネ、外して大丈夫なんですか?」
「ああ。これはダテだ」
予想もしていないことを言われた。
てっきり視力が悪いせいだとばかり思っていたけれど。そういえば、棘を取ってくれたときにもメガネを外したっけ。
「でもどうしてですか?」
「いろいろとね」
疲れたように眉間を抑えて、部長が私を適当にあしらう。