鬼部長に溺愛されてます

そして結局、部長は早苗さんの口を止めることはできずに折れることになった。


「人事部長っていう職務はね、普通の神経の人間には結構きついものなの。人の未来を決めてしまう部分があるでしょ? だから心の弱い部分を悟られないように、メガネがフィルターの役割をしてるのよ」


そういえば、私が新入社員研修で初めて桐島部長を見たときにはメガネを掛けていなかったかもしれない。
あのときはまだ部長ではなかった。

メガネで心を見せないようにガードしているというのなら、それを外しているときは心を許してくれているということなのかな。
だとしたら、今は気を許してくれてるの?
私がそばにいても、会社のときのように虚勢を張る必要はないと思ってくれてるってこと?

部長少し近づけたような気がして、隣でにやける顔を隠すことに必死になった。


「早苗さん、なにか鶏肉料理はある?」

「そうねぇ……鶏団子の煮物ならあるけど?」

「じゃ、それを」


先に出された揚げ出し豆腐をつまみながら部長がお願いした。

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