鬼部長に溺愛されてます

「桐島(きりしま)部長、絶対にひがみだよね」


ミオリが眉間に皺を寄せて、私に同意を求めた。
桐島部長というのが、その人事部長だ。


「あ……うん」

「そうじゃなきゃ、会社の風紀が乱れるなんて、今どきそんな古臭いこと言う人はいないもん。そうでしょ?」


私の顔を覗き込み、尚も念を押す。
私が適当に受け流すと、ミオリはちょっと訝しげな表情で首を傾げた。

まさか私が、その桐島部長に片想いをしているだなんて口が裂けても言えない。
そんなことを口走ったならば、ミオリどころか誰もがみんな口を揃えて反対するだろう。社内恋愛禁止だと先陣を切っている人、その張本人なのだから。

私がしているのは絶対に叶わない恋で、一生手の届かない相手なのだ。
何度考えたって出てくる結論は、いつも私に深いため息を吐かせた。


「麻耶、誰が飛ばされるのか、私ちょっと見てくるから!」

「ちょっと! ミオリ!」

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